“いーえむとんぼ”の歩み

2000年生まれのEMトイレットペーパー

今ではEM環境グッズの代名詞となったシャボン玉EM石けん。いーえむとんぼはシャボン玉EM石けん(2004年発売)よりも早く誕生した言わばお兄ちゃんのような存在

「EM入りトイレットペーパー イーエム・トンボ」がはじめて商品化されたのが2000年。EMが誕生してから18年目のことです。イーエム・トンボの登場で「これまで何気なく使っていた製品で環境浄化ができる」ようになり、「EM(だけ)で環境浄化」というこれまでの認識が180°ひっくり返りました。そのことに当時本当に驚かされたのを今でも覚えています。その後、イーエム・トンボのDNAがシャボン玉石けんのEM石鹸シリーズの開発に受け継がれ、「身近なEM製品で環境浄化」という考え方がより一層広まっていくことになります。

イーエム・トンボとの出会い

懐かしのEM情報誌「エコピュア」。いーえむとんぼの出発もエコピュアと沖縄で開催されていたEMフェスタ
エコピュアはウェブエコピュアにリニューアル。ウェブでEM情報発信中!

私がイーエム・トンボとはじめて出会ったのはEMフェスタというイベントでした。琉球大学でEMを学んでいた折、EMフェスタにボランティアスタッフとして参加することになりました。私は新商品をご案内するブースをサポートさせていただくことになったのですが、そのブースで展示されていたのがイーエム・トンボだったわけです。イーエム・トンボとEMの炭・紀州新備長炭をお客様に一生懸命説明させていただいたのですが、お客様と触れ合う中でEM商品を普及することをすごく楽しく感じました。大学卒業後、EM研究機構に就職させていただいたのですが、私はEMフェスタでの体験が忘れられず、もっとお客様の近くにありたいという思いが強くなるばかりでした。そこで結婚を機に独立し、2006年にEMを普及するためのベンチャー企業を立ち上げました。まず真っ先に向かったのはもちろんイーエム・トンボを作っていた静岡です。その後、何度も何度も工場に通ってイーエム・トンボに対する思いを伝え続けました。そうしたところ責任者の方が「イーエム・トンボは君に任せる」と言ってくださり、私の会社はイーエム・トンボ事業を正式に受け継ぐことになりました。私が学生時代から想い続けたイーエム・トンボと一緒に歩めることがなによりも嬉しく、事業を任されたことを本当に誇りに思いました。

イーエム・トンボの終わりとはじまり

発売当初から親しまれてきたイーエム・トンボですが2009年突然の終わりを迎えることになります。イーエム・トンボ製造会社が合併によりトイレットペーパー事業から撤退することになったのです。当時、製紙会社の閉鎖が相次ぎ、数年で十数社が廃業していました。その後も統廃合がどんどん進み、原料の高騰も相まって採算の取れない国産トイレットペーパー事業は縮小の一途を辿ります。イーエム・トンボも例外なくリストラとなり、私の会社がイーエム・トンボ事業を引き継いだ1ヶ月後には製造会社から製造中止の通達を受けました。慌てた私は、最後の製造を同社にお願いするとともに、すぐにトイレットペーパーの製造会社を何社も回りました。ですが特注品のイーエム・トンボを製造してくれる会社は簡単には見つかりません。知人の紹介でようやく製造の協力を取り付けることができたのは在庫切れから半年後のことでした。しかし、その関係も長くは続きません。1度きりで製造は打ち切りとなってしまいました。その会社も主力商品に集中するためにトイレットペーパーの製造から撤退されることが理由でした。ある製紙会社の方が言われていたことですが、「工場を維持するためだけにトイレットペーパーを製造している」という話を当時は何気なく聞いていたのですが、トイレットペーパーの市況を一番よく言い表していたのだなと後で気がつかされました
生産開始の目処が全く立たない中、毎日必死にイーエム・トンボを再販するための準備だけを行っていました。そうしたところ、それまでずっと相談に乗っていただいた八幡浜紙業さんから「うちが製造しましょう」という連絡を頂きました。当時トイレットペーパーを作られてはいませんでしたので、このようなお話を頂けるとは全く思っていませんでした。トイレットペーパーを作るためには専用の設備も必要です。設備導入という難題にも「心配しないでいいですよ」との一言だけでした。このように八幡浜紙業さんの全面的なバックアップをいただき、ついにイーエム・トンボが再開できることになりました。

“ イーエム・トンボ ”から“ いーえむとんぼ ”へ

新旧いーえむとんぼ

再開の目処は立ちましたが、前の試作からすでに1年経過しており、お客様からのご連絡も日に日に少なくなっていきました。再開しても事業として成り立つのかもわかりませんが前に進むしかありません。販売を休んでいた間も愛媛に何度も通い、試験センターで試作しながら新しいイーエム・トンボの形を模索していました。

一度商品の供給が途絶えてしまったわけですから、旧商品を超えなければお客様に再び認めていただくことはできません。もっと良い商品を作るために、これまでの作り方を一から見直し、EMの効果が一番発揮できる配合や処理方法を何度も繰り返し検証しました。試行錯誤を重ねた末、ようやく商品化できたのが2011年。今までのイーエム・トンボを超える全く新しいイーエム・トンボができあがりました。

開発当初の様子
EMを添加した試作品の前で

世界で一社だけの製法

世界中探しても本当のいーえむとんぼを作れるのは八幡浜紙業さん一社以外にはありません。それは特別な設備が必要だからという理由ではありません。紙を抄く機械はほとんどどこも同じです。なので、いーえむとんぼを作ることはどのメーカーでも可能なはずです。ですが、いーえむとんぼを実際に作る企業はいません。「作ることはできても、作りはしない。」それがいーえむとんぼの製法といえます。
紙は化学薬品を本当に多く使う製品の一つです。紙づくりに使用する化学薬品のリストを見ていると、その多さには本当に驚かされます。加えて、化学薬品の害をなくすために別の化学薬品を使わなければならず、薬に依存しなければ作れないというのが実際の紙作りです。いーえむとんぼはどうかというと、薬漬けの製法をやめなければ作ることはできません。薬を止めると、今度は今まで知らなかった問題も出てきます。誰も作ったことがないので前例がなく、対処法はわかりません。問題を解決するためには新しい技術を開発しなければならないこともあります。
ゼロから作り上げる。それができるのは八幡浜紙業さんだけなのです。

環境にも人にも一番やさしい“いーえむとんぼ”

最近、ある大会で衣類に残留していた化学薬品でひどい皮膚炎を発症した事故が大きく報じられました。使い方を一つ間違えば大事故にもなりかねない化学薬品は安全と言われていても多用しないことが望ましく、できることなら使用しない方が良いことは言うまでもありません。
紙作りも同じです。紙にはたくさんの化学薬品を使用することを紹介しましたが、それらは排水を通じて外の世界へ出ていくことになります。微生物を殺菌するために使用する薬品は自然界でも微生物を死滅させます。合成界面活性剤は動物細胞をいとも簡単に溶かしてしまい、水をきれいにするための自浄作用を損ねます。プラスチックはパルプ繊維に付着しているのですから水生植物や魚に再付着して死なせてしまうかもしれません。むろん排水は浄化されてから排出されますが、一度汚染された水が100%安全になる保証はどこにもありません。それは紙製品も同じです。化学薬品が一度付着した製品から完全にその影響を取り除くことはできません。実際、普通の紙を作るときに肌荒れがひどかったのに、いーえむとんぼを作るようになってから荒れなくなったという話があり、製造時に使用する化学薬品も過敏症の原因になっていたものと考えられます。
化学薬品を多用しない製品。いーえむとんぼが環境にも人にも一番優しい商品である理由です。

EMを使う本当の理由

「化学薬品を減らすこと。」紙作りではそれだけでも十分意味があります。環境や人に優しい製品ができるからです。微生物を殺菌するために化学物質を使用していた場合、EMの抗菌力で代用することも可能です。ですが、それだけではEMを使用する理由としては不十分といえます。いーえむとんぼにEMを使用するのにはもっと大きな理由があります。
EMの最大の特長とされるのが抗酸化力などの酸化抑制能力です。ですが、それはEMが働いた結果にすぎません。EMを使用する本当の理由、それは「環境をよくする」ことといえます。EMで処理されたEMトイレットペーパーからはEMに含まれている微生物が発生することが報告されています。それは環境中にEMのような良い微生物を誘導することができる性質といえます。さらにEM製品は水質を浄化する原生動物の良い餌になっていることも明らかになりました。これはイーエム・トンボと同じ環境浄化製品シャボン玉EM石鹸の研究成果なのですが、EM石鹸を溶かした水界では非添加石鹸の水界よりも原生動物が二倍以上に増加しました。
このようにいーえむとんぼにEMを使用するのは製品の質を高めるためなのです。いーえむとんぼが自然に帰る(分解する)とき、良い微生物が誘導されることで、原生動物に活力を与え、より良い食物連鎖を構築することが可能になります。EM製品ではEM自体が直接環境を良くしているのかはまだわかっていませんが、EM製品が自然にやさしいことは間違いありません。もちろんEMが持つ良い性能は、EM製品になっても私たちに好い影響をもたらしてくれます。

最後に

本文にお付き合い頂き本当にありがとうございました。いーえむとんぼについて少しでも知っていただければ幸いです。私はEM活動が「EMを使えばいい」というだけでなく、問題の本質がなんなのかを考えさせてくれることに意味があると考えています。米のとぎ汁EM醗酵液は排水を流す責任が私たちにあることを考えさせてくれる活動でした。同じようにEM製品を作るという活動を通じて、私は製品が環境に及ぼす本当の影響や問題点、その解決法について真剣に考える機会を与えてもらったと感じています。
物づくりでの活用法もEMの原点であるEM農法と全く同じでした。EM農法の基本は薬に頼らない元気な野菜を作ることにあります。薬に頼らないということは野菜が元気ということです。そんな野菜には栄養がぎっしり詰まっています。元気な野菜が育つ土には病原菌もほとんどいません。元気な野菜を食べれば私たちも元気になります。健康の輪はどんどん周りにひろがっていきます。EMを活用するということは、健康の輪を広げることなのだと思います。
一方、薬に頼るということは何かしら不健康だということです。病気になれば薬を使い。病気が治ったあとも薬を使います。体の栄養の消費も大きく、たくさん栄養を補充しなければならず、悪いことがどんどん連鎖してしまいます。EMの目的が健康の輪を広げることなのだとしたら、不健康の原因を取り除くこともEM活動の基本ということになります。
いーえむとんぼを作る上でも、人と自然を健康にするために、さらに良い製品を作ることを意識しながら、人の不健康や自然破壊の原因とならないために最大限注意を払っています。これがいーえむとんぼの事業を行う上で最も大切にしていることです。
これからも皆様と共にEM活動を通じて社会に健康の輪を広げていければと願っております。

(同)イーエムバイオエンジニアリング
代表 植田 悦史